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季の雲の作家たち06 市川孝

06料理のプロである料理研究家の皆さんからも支持を集める市川さん。彼の工房は「季の雲」から車で15分ほどの伊吹山の麓にあります。数年間の修行の後、生まれ育った伊吹町(現在は米原市)に戻ってきたのが、1999年のこと。土ものの良さを活かした、丈夫で割れにくい白瓷(しらし)と焼〆の土瓷(はじ)。そして、耐火シリーズ。作品に使う木蓋まで自分で作ってしまうため、その作業量は大変なものですが、当のご本人は楽しくてしょうがないみたい。なかでも耐火の鍋や皿は火にかけて鍋やフライパン代わりに使用すると、表面に煤(すす)が付いて油染みも重なり、どんどん味が深まっていく。うつわを育てるように使いたい、そんな方にとっては、とても魅力的なアイテムといえます。

ご本人の第一印象そのままに、気取らず、そして

生活に馴染む「ものづくり」をされていることが、お客様の心をギュッとつかんでいるのでしょう。勉強熱心なところも彼の素晴らしいところで、展覧会の会場で過ごす時間の大半をお客様との対話に費やします。こんなうつわがあったらいいな、ここはもう少しサイズが小さいほうが使いやすい…などなど。要望やアドバイスに真摯に耳を傾ける姿からは、市川さんの「ものづくりのヒントをたくさん吸収したい」という想いがひしひしと伝わってくるのです。

そんな市川さんが最近、力を入れているのが茶杯や急須。なんでも、台湾で活躍されている茶の専門家、李曙韻(Li Shuyin)さんとの出会いをきっかけに台湾茶を知り、茶というものに関心を持つようになったのだとか。茶道具の新シリーズも誕生し、今後、ますます目が離せない作家さんのひとりです。

市川孝 Takashi Ichikawa

1967年
滋賀県に生まれる
1990年
北海道教育大学 釧路分校(彫塑)を卒業
1992年
上越教育大学大学院(彫刻を専攻)を修了
滋賀県立伊吹高校で美術の臨時講師として勤務
1993年
滋賀県信楽町にある古谷製陶所に勤務
1996年
三重県上野市で作陶
1997年
和歌山県在住の森岡成好氏に師事
1999年
伊吹町に倒炎式薪窯を築窯、各地で個展
2009年
半地下式薪窯を奥伊吹に築窯
現在
東京「魯山」「夏椿」、京都「川口美術」「kitone」、長浜「季の雲」などで展覧会を開催
01

いつも優しい笑顔の市川さん。タオルを被って黙々と作業する姿は、土とともに生きる人の姿そのもの。

02

梅干しやお味噌などを保存するための壷。タグを付けるためのパーツなど、ちょっとした心遣いが嬉しい。

03

奥伊吹の工房にある半地下式薪窯。勢いのある炎で焼成された、味わい深い陶器の完成も楽しみです。