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キーワードで知る、日本の工芸と伝統文化。04「江戸切子」

江戸で育まれたカットグラス。

「切子」とはガラスを削る技法のこと。日本では江戸時代に初めて切子技法によるカットグラスが制作され、明治期以降に一般に広まりました。その一大産地となったのが当時の江戸、現在の東京です。当時、ガラスの原材料となる珪石は東北地方から江戸まで船で運ばれていたため、切子は川沿いの町である荒川を中心に広まりました。これらは「江戸切子」と呼ばれ、平成14年には国の伝統工芸品にも指定されています。江戸切子ともうひとつ、鹿児島(当時の薩摩)で生まれた「薩摩切子」も日本を代表する切子のひとつ。100年以上に渡り受け継がれてきた江戸切子とは対照的に薩摩藩藩主の死去と薩英戦争で途絶え、一時は“幻の切子”と呼ばれましたが、昭和60年に復元され現在に至ります。

ひとつひとつが、職人によるハンドメイド。

江戸切子の制作行程はガラスの表面にカットの目安になる線を付ける「割り出し」の後、模様の太線部分を削る「荒摺り(あらずり)」、細かい模様を仕上げる「三番(さんばん)」、削った模様の表面を滑らかに整える「石掛け(いしかけ)」、仕上げの「磨き」の5段階。当初の材質は透明な透きガラスでしたが、近年は瑠璃や赤といった色ガラスでカッティング部分が透明になる色被せ(いろきせ)ガラスを使用した作品が主流となっています。また制作における特徴のひとつとして、江戸切子ではガラスの表面に模様の下絵が描かれることはありません。切子職人の高度な技術の結晶、それが江戸切子なのです。

光を放つカッティング。江戸切子の楽しみ方。

江戸切子の鑑賞ポイントといえばやはり、ガラス面に施された緻密な模様でしょう。魚卵をイメージした魚子(ななこ)、笹の葉、菊つなぎ、籠の編み目の籠目(かごめ)など、いずれの模様も身近な自然や生活の道具がモチーフになっています。左右対称の直線的なデザインは江戸ならではといえ、江戸切子では複数の模様を組み合わせて使います。カッティング部分が光のプリズム効果できらめく様は大変美しく、お客様をお招きする時のテーブルウエアとして使用するのはもちろん、観賞用のインテリアとして楽しむことも。なかでも、高級なクリスタルガラスを用いた江戸切子は両親や目上の方へのギフトにもぴったりです。

笹の葉・魚子の切子模様

籠目・菊つなぎの切子模様

八角籠目・花の切子模様

江戸切子でテーブルに華やぎを