日本屈指の温泉地である有馬温泉の伝統工芸品であるかわいらしい人形筆。兵庫県の伝統工芸品にも指定されています。現在は灰吹屋西田筆店（はいぶきやにしだふでてん）　でしか作られていないため、有馬温泉に足を運ばないとほとんど手に入れることができず、訪れる観光客にとても人気があります。 人形筆の魅力はなんといってもそのカラクリ。寝かせておいている状態ではわかりませんが、筆をもって書こうとするとかわいらしい豆人形がピョコッと飛び出します。筆軸には色とりどりの絹糸が巻かれ、美しくかがられており、見た目にもとても美しく持っているだけでうれしくなるような筆です。 有馬の土地はかつて筆の一大産地であったこともあり（現在、世界的にも有名な熊野の筆職人に技を伝授したのも有馬の職人だといわれています）、人形筆に使われている穂先も粘りがあって書きやすい上質なものです。筆軸にかがられた色とりどりの絹糸は、見た目に美しいだけでなく、もったときに滑りにくくなり、実用品としても重宝します。筆を真っ直ぐ立てる正しい持ち方の練習用としてお子様にも喜ばれ、お土産としても人気です。 筆を真っ直ぐ立てる正しい持ち方の練習用としてお子様にも喜ばれ、お土産としても人気です。 筆をもって書こうとするとかわいい人形がピョコっととびだし、書き終わって筆立てに寝かすと筆の中にかくれます。 すべて細かい手作業ばかりで、糸車をスルスルと回しながら、日本刺繍に使われる色とりどりの絹糸をとても素早く軸に巻いていく西田光子さん。14～5色ある絹糸の中から、筆１本に対して、多いもので７色、少ないもので２色、選び出し、軸になる竹の両側の中心に印をつけ、1.5cmごとに絹糸を巻いていきます。 基本の模様は、市松、青海波、うろこ、矢がすりの４種類ですが、組み合わせと色を変えることで、多種多様な模様がいくらでも出来るそうです。同じ柄でも糸を一本変えるだけで雰囲気もガラリと変わるため、出来上がりは1本1本趣が異なります。 現在は、六代目の西田光子さんとお嫁さんの明子さんが伝統を守っています。光子さんは、この道60年という大ベテランです。 同じ柄でも糸を一本変えるだけで雰囲気もガラリと変わるため、出来上がりは1本1本趣が異なります。 基本柄 青海波はお祝いの品として、また、うろこは魔除けとして珍重されています。基本の柄は、ごまかしが利かないので、作るのがとても難しいそうです。 市松 絣 青海波 うろこ 人形は石膏と小麦粉を１：１の割合で混ぜたもので出来ています。 竹ヒゴにつけて乾かした後、墨を浸した綿花に頭をつけていきます。 そして、一つ一つ顔を描き、着物を着せて、ニスを塗ります。 形をつけた針金と重りを人形に糸で結びつけると、からくりが出来上がります。 このからくりは長い伝統のある特許のようなものなので、ご先祖から代々伝わってきた家伝の秘密だったのですが、光子さんが、せっかく面白い仕掛けだからと、すべて公表されたそうです。 写真右が、筆の軸の中にはいっているカラクリ 左写真はニスをぬって乾かしているところ 日本最古の温泉発祥地とも言われる有馬温泉。 温泉街の中心地に灰吹屋西田筆店があります。 店先にはHPではのせきれない多種多様な模様の筆が並べられています。作業風景も眺めることができ、観光客の方も多く訪れます。有馬でしか手に入らないあなただけの人形筆を手にしてみませんか。 西田さん達の作業風景を眺めることができ、毎日大勢の観光客がここを訪れます。 「灰吹屋西田筆店」営業時間 9：30～18：00　　定休日：水曜日 日本最古の温泉発祥地とも言われる有馬温泉の金の湯。 昔ながらの丸くて赤い郵便ポストが見えたら西田筆店はもうすぐです。 観光スポットの一つである天神泉源。 足湯でくつろぐのもおすすめ 湯気のたつのどかな風景 奈良時代、三十六代孝徳天皇が、お妃の宝皇女に御子がないのを嘆かれていましたが、有馬温泉に逗留されたところ間もなくご懐妊され、有間皇子がお生まれになりました。人形筆はこの有間皇子に因んで創作されたものといわれており、「子宝縁起」のお目出度いお飾りとして、またご贈答の品としても喜ばれています。 灰吹屋西田筆店　人形筆（1本入り箱） 灰吹屋西田筆店　厄除け人形筆（1本入り箱） 七色の物を身につけると、厄除けになると言われおりお土産としても人気です。 灰吹屋西田筆店　糸巻き小筆 兵庫県内には優れた伝統的技術技法によりつくられた手作りの工芸品があります。いずれも兵庫の自然と暮らしの中ではぐくまれ、「用」と「美」に独特の味わいを兼ね備えた生活用品として、人から人へ受け継がれてきました。 昔より職人の間に受け継がれ伝承されて来た伝統的技法を今も守り、そしてその技法を生かしつくり上げられた工芸品のみが指定されます。